出雲を原郷とする人たち

各地の郷土史を結ぶことで、列島の広域にわたる人の移動、文化伝播のルートが見えてくる

大和文化が畿内を中心とし放射線状に拡がったと言われてきたのと比べれば、出雲文化は海流の道に沿った一定の方向へ、顕著に伸びています。新羅と繋がる出雲文化は海路で能登から越へ伝播し、越後で内陸に折れ、信州・北関東へと南下していく。今まで孤立していた各地の郷土史をつなぎ合わせることで、出雲からの人の移動や文化伝播のルートが見えてきました。出雲に限らず、取り上げた関連地域の、郷土を越えた人の移動、文化の交流史としても、おもしろい本になったと思います(能登と越後、越後と会津、北信、北関東とのつながりなど)。同じことは、宗像や安曇などでもできるのではないかと思います。郷土と郷土の歴史を結ぶことで、列島や列島をも越えた広範囲な人の移動、文化の交流を描き出す―本書がそんな試みの一事例にもなれば、幸いです。

刊行に寄せて(出雲を原郷とする人たち)藤原書店『機』296号   画像 TEXT

 

書名の由来 山陰中央新報連載「出雲を原郷とする人たち」(2011年4月~2016年1月)

2007年には台北で、2008年にはサンフランシスコで期せずして出雲出身者と出会い、お世話になりました。2009年も北カリフォルニア島根県人会の新年会やオアフ島のハワイ出雲大社などで出雲ゆかりの方々に、よくしていただきました。出雲をoriginとする人たちが世界各地にいる。列島各地に残る「出雲」地名や出雲神社も、出雲人たちの移住の足跡ではないか。スペイン語地名が多く残る米国西海岸や、日系移民とともに生まれたハワイ出雲大社に身を置きながら、考えたことです。自身、出雲の外で暮らす出雲人の私が、同じく出雲を原郷とする人たちの地を巡る―2011年春、山陰中央新報で連載を始めるにあたり、自分のアイデンティティに重ねて名づけたタイトルでした。

出雲を原郷とする人たち 目次(全)

 

表紙デザイン(裏話)

表カバーには当初、私が取材先で撮った列島各地の「出雲」の写真を、落ち着いた赤を背景に組み合わせるつもりでしたが、その組み合わせに試行錯誤する中、編集者の刈屋琢さんが、その中の1枚、出雲の気多島が映る海の写真を、表から背表紙までまわす斬新なデザインを提案。あまりに大胆な方針転換に戸惑いを感じた私も、周囲の感触を確かめつつ、これがいいと思い、表にするつもりだったデザインが裏カバーとなりました。こうして、表から背までは海と空の青、背は赤という奇抜でありながら落ち着きのある色合わせが、生まれたのです。私を驚かせる提案をして下さった刈屋さんに、感謝です。海の広がりを感じさせる写真を表に、という発想は、本書の趣旨を熟知した編集担当者ならでは。南洋との交流を物語るゴホウラ貝の腕輪が出土した猪目洞窟から1㎞余の十六島(うっぷるい)湾の端(出雲市下町)に位置する平島は、出雲国風土記の気多島とされる岩礁ですが、山陰から能登半島、越後まで海沿いに連なり、越後から内陸に折れて、会津や武蔵(北関東)へ伝播した気多(ケタ)地名・神社の起点です。海の道を大動脈とする人の移動、文化の伝播を主題とする本書にふさわしい表紙となりました。なお裏カバートップには出雲大社にご提供いただいた遷宮後の御本殿、左下(2枚)には私が一眼レフ、ポジフィルムで撮った作品用の出雲の写真を置きました。

出版社(藤原書店)Web Site

 

出雲を原郷とする人たち 書評・紹介記事

  • 福島民報 2016年12月17日 読書欄 新刊抄
  • 山陰中央新報(島根・鳥取) 2016年12月18日 平野芳英 全国に残る証訪ねて 画像  TEXT
  • 福井新聞 2017年1月18日 伊与登志雄 「海の道」通した移住史、出雲文化の広がり解明、越前海岸沿いも調査 画像  TEXT
  • 北日本新聞(富山) 2017年1月18日 出雲のルーツ訪ねる 画像
  • 朝日新聞 2017年2月5日 原武史 全国の分布 執念の取材で解明 URL
  • 東京新聞 2017年2月5日 佐藤洋二郎 古代の痕跡訪ね歩く URL
  • 愛媛新聞 2017年2月5日 BOOK REVIEW

山陰中央新報連載記事(サンプル)

  • 第2回 筑前国(上) 2011年4月27日 小字名で残る出雲―今に続く土師氏の末裔 福岡県飯塚市 画像
  • 第5回 越前国(1) 2011年6月28日 そり子と呼ばれた海民―中世出雲から移住 福井県越前町 画像
  • 第16回 加賀国(上) 2011年10月25日 出雲神社、金沢に集中―海や潟に通じる位置 石川県金沢市 画像
  • 第23回 能登国(5) 2012年2月7日 気多神起源は出雲・因幡?―対馬海流に乗り信仰伝播 石川県羽咋市 画像
  • 第31回 越中国(4) 2012年6月5日 海路で伝播 四隅突出墓―糠塚 出雲的要素の伝説 富山県富山市 画像
  • 第35回 伊予・讃岐国(4) 2012年8月7日 国造を生神様として崇拝―霊験持つ湯釜が人気 愛媛県松山市 画像
  • 第45回 安芸・備後国(3) 2012年12月11日 孝行息子の心温まる伝説―山中野の出雲石 広島県 画像
  • 第62回 越後・佐渡国(13) 2013年9月17日 沿岸に残る大国主の伝説―鬼と岩投げで力比べ 新潟県糸魚川市 画像
  • 第70回 信濃国(1) 2014年2月18日 万葉仮名の伊豆毛神社―北越入信の出雲族祭る 長野県長野市 画像
  • 第82回 武蔵国(5) 2014年10月28日 氷川、久伊豆、鷲宮―東に拡大 出雲神社群 埼玉県 画像
  • 第83回 岩代国(1) 2014年11月18日 幟旗が語る出雲神社名称―越後から会津へ連なり 福島県喜多方市 画像
  • 第93回 大和国(3) 2015年6月23日 纒向遺跡に山陰系土器―出雲国造率い訪京団 奈良県桜井市 画像
  • 第99回 山城国(上) 2015年10月21日 京都加茂川西岸の出雲路―出雲氏創始伝わる社分布 京都府京都市 画像
  • 第105回 番外編(上) 2016年10月26日 丹波、若狭から能登へ―出雲神社がつなぐ道 京都府、兵庫県、石川県 画像
  • 第106回 番外編(下) 2016年10月27日 信仰の一拠点 南志見―合祀100年 独自の祭祀 石川県輪島市 画像

類書・関連作品

  • 保高英児 日本列島に映る「古代出雲」紀行 明石書店 2008年 出版社URL
  • 三浦佑之 古事記を旅する 文春文庫 2011年 三浦佑之宣伝板(URL)
  • 第14回櫻井徳太郎賞(2015年) 高校生の部 優秀賞 吉田壮志(武蔵高等学校1年) 氷川神社の創建と発展に関する考察  東京都板橋区URL